学校長からのメッセージMessage

第74回 大谷中学校 卒業証書授与式

 皆さん お早うございます。式辞の前に、一言、申し上げます。
 今年度は新型コロナウィルスが発生し、世の中の様々な分野が大きなダメージを受けています。教育界も同様に、教育活動が制限される深刻な教育環境になりました。今なお、感染拡大の収束には至らず、不透明感が残っている現状です。しかし、感染防止対策等を講じ、諸事情を検討した結果、本日、めでたく、卒業証書授与式を挙行することになりました。
ただ、本来なら、本日の卒業式を、ご来賓の皆様方、保護者、ご家族の皆様方とともに、あなた方の卒業をお祝いすることになっていましたが、残念ながら、卒業生の皆様と教職員の参加に止めての挙行になっています。保護者、ご家族の皆様方には、別会場で卒業式の様子を映像でご覧いただいています。どうか、昨今の現状を理解して、受け止めてください。
それでは、式辞を披露させていただきます。

式辞

校庭の桜の花も早くも満開を迎え、心が弾む本格的な春の訪れの時季となっています。
この佳き日に、令和2年度 学校法人大谷学園 大谷中学校 第七十四回 卒業証書授与式を挙行できますことを心より感謝申し上げます。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
保護者、ご家族様の皆様におかれましては、卒業生を暖かく励まし、支えてこられたこれまでの限りない愛情と、ご苦労に対しまして、深く敬意を表するとともに、今日のこの佳き日を迎えられましたことを心よりお祝い申し上げます。
只今、203名の卒業生の皆様に心を込めて、一人ひとりに思い出の一杯詰まった、何にも替え難い、大切な卒業証書を授与させていただきました。それぞれの卒業証書にはわが学び舎で育んだ人を思いやる、人を愛する心が宿っています。私たち教職員のあなた方に対する深い愛情、心より幸せを祈る思いが籠っています。あなた方の歩んできた大谷中学校の存在そのものです、きっと、高等学校に進んでも、常に、あなた方の側にあり続け、心の支え、拠り所になってくれるでしょう。
季節はめぐり、常に私たちに相変わらぬ春夏秋冬の色合いを届けてくれます。しかし、時には思いもよらない出来事が起こることがあります。その一つは左藤恵学園長先生がご逝去されたことです。行年九六才でご浄土に旅立たれました。学園長先生は阿弥陀仏の住まわれる極楽浄土でやすらかに暮らされていて、西方浄土から私たちの幸せを祈って温かく見守ってくださっています。
学園長先生は僧侶で、政治家、弁護士でもあり、何よりも教育者であられました。政治家とし郵政大臣、法務大臣、国務大臣を歴任され、国会議員として多忙な時であっても、常に世の中の一隅を照らす女性の育成に全身全霊を捧げられました。
本校の教育理念は「次世代の命を育む女性にこそ高い教養と豊かな魂を」の言葉に込められています。この理念を礎にした女子教育の精神的支柱が左藤恵学園長先生でした。ご逝去されたことは誠に悲しく、寂しく、残念でたまりません。学園長先生はひと時も忘れず大谷学園の発展を願われ、学園にご縁のある全ての方々の幸せを願っておられました。先生が望んでおられたことは、『常に感謝する心を持ち続け、課せられた責務を十分に果たし、人として、「生まれてきてよかった」「生きてきてよかった」と思える人生を歩んでほしい』ということであったと思います。先生のご意向に沿うよう、一人ひとりが精進努力し、幸せの道を歩いていただきたいと思います。
もう一つの特筆すべき出来事は新型コロナウィルス禍の影響です。これまで大きな災害をもたらした未曽有の危機はきまって不意に訪れます。非常時になると、自分中心の考え方が芽生え、利己的になり、おのずと人間としての品位が失われていく場合があるのです。しかし、元来、私たちには「和」を尊ぶ心が備わっています。だから、これまでに幾度も遭遇した災難にあっては、「私」より、「公」を優先し、周りの人々を思いやり、互いに支え合うことにより、多くの危機を克服することができたと思うのです。
今後も、有事の時こそ、節度を失わず、競い合うよりも、皆が一つ、ワンチームになり、平穏な生活が営むことができる源泉である「和合なかよくたすけあって」の豊かな魂を大切にしていただきたいと願うばかりです。
さて、皆さんにとって3年間の中学生活はどうだったでしょうか。楽しかったこと、辛かったこと、感動したこと、たくさんの思い出が、今、皆さんの脳裏に浮かんでいることと思います。多くの知識を身につけ、様々な体験をし、充実した中学生活を送ったことでしょう。思い起こせば、三年前、中学入試の試練を乗り越えて、合格証書を手にした喜びで一杯の笑顔で、夢と希望を抱いて、心を弾ませながら、校門をくぐったことが昨日のように感じられます。入学時には、少し大きめの真新しい制服に身を包み、緊張を隠せない、まだ幼い、たどたどしかった姿が、今、大谷中学校での様々な経験を通して、一回りも、二回りも大きく成長し、お嬢様らしさが増したことを心よりうれしく思います。保護者の皆様におかれましては万感の思いで感無量のこととご推察いたします。どうか、いつまでも温かい眼差しで、お嬢様を見守り続けてください。
今、あなた方一人ひとりがこの晴れ舞台で手にした卒業証書は、義務教育九か年の全課程を終了したことを表しています。これまで、
ご両親をはじめとする多くの大人たちの庇護のもとで生活してきました。しかし、これからは、自分のしたことは自分で責任を負う、まさに大人社会に近づく大きな一歩を踏み出すことになるのです
高校生活は中学時代と大きく違って、景色が一変します。「義務」という冠が取れた高校生活では、あらゆることにおいて、その都度、自分で判断し、自分の意思で選択しなければならない機会が多くなります。つまり、日常生活の様々な事象に主体的に携わる態度が求められるのです。また、一方、選択したその結果については、自らの責任で対処しなければならない結果責任の義務があることを心得てほしいと思います。自分のしたことの結果を、他人のせいにしたり、逃げたりせず、自分で責任を取らなくてはならないのが高校生です。
それでは、中学校課程の修了という人生の大きな節目の一つであるこの機会に、楽しい、有意義な高校生活が送れる一助になることを願って、三つのことをお話しておきたいと思います。

一つ目は「温かい言葉で、思いを伝えることを忘れずに」のメッセージです。
言葉とは、私たちの生活になくてはならないものの一つです。用件を伝えるにも、知識や情報を得るにも、言葉は重要な働きをしています。昔から、言葉は「心の架け橋」であると言われてきました。言葉は心の表れであり、人柄の表れでもあります。時と場合に応じて、私たちは様々な言葉を使って自分の思いを人に伝えています。その言葉は相手に影響を与え、自分自身も影響を受けます。だからこそ、良い影響を与える言葉を使うことが大切です。
「以心伝心」という言葉があります。「察すること」や「気を利かせること」が美徳とされてきました。しかし、「察すること」だけで全ての思いを理解することができる訳ではありません。例えば、「ありがとう」「すみません」といった一言には、私たちの人間関係を和やかなものにしていく力があるのです。人を明るい気持ちにさせる言葉も、暗い気持ちにさせる言葉も、人を勇気づける言葉も、落胆させる言葉も、全ては私たちの心から生まれます。私たちが温かい言葉をかけることによって、周囲の人の心に喜びをもたらし、温かく親密な人間関係の輪が広がっていったとき、その輪の中にいる自分自身にも大きな喜び、幸せを感じ取ることができると思うのです。
この世の中は、人と人との 「心のつながり」で成り立っています。身近なところでは、友人や家族との「つながり」があります。このつながりがなければ、円滑な社会生活も家庭生活もありえないのです。とりわけ、中学時代に楽しく語り合い、親交を深め、一つの目標に向かって、互いに協力し、支え合う中で、喜びも、悲しみも共有できたのは、まさしく、友達との篤い心のつながり、絆があったほかありません。これから歩むことになる新たなステージの高校時代においても、友達と築いた心の絆がさらに深まるよう是非、温かい言葉で、自分の思いを伝えてください。

二つ目は「心が豊かになるためには宗教心を高めることが大切」というメッセージです。
本校は宗教的情操教育を実践しています。本校での宗教心とは阿弥陀仏の大慈悲を拠り所にする「いつでも、どこでも、誰にでも、選ばず、嫌わず、見捨てない」とする全ての人々とともに歩み、手を差し延べ、支え合おうとする心です。この心を育めば、誰もが心豊かにして幸せな生活を送ることができると確信しています。しかし、この境地の心構えを身に付けることはなかなか困難であるとされています。なぜなら、人は一人では生きていくことはできません。必ず、集団となって生活を営む習性があります。悲しいかな、人は集団生活の中にあっては、他の人々より少し上に立ちたい、優越感を持ちたいと思ってしまうことが度々あるのです。その時の心は「今だけ、ここだけ、私だけ、選んで、嫌って、切り捨てる」の心境になり、いわゆる、学歴主義、エリート意識、ブランド志向が芽生えてくるのです。結果的に勝ち負けの世の中、「できる」、「できない」の基準で人を評価する成果主義の世の中が生まれてくるのです。人として、人の世を歩むうえで大切なことは、対等の立場で、同じ目線で語り合い、一人ひとりが、互いに平等で尊敬し合うことができる豊かな心に繋がる「宗教心」を育むことです。

三つ目は「今を精一杯生きる」というメッセージです。
あなた方には若者の特権があります。それぞれが夢と希望を抱いて様々な分野にチャレンジできるチャンスがあります。人から教えられ、与えられるものには限りがあります。有限です。自ら学び、求めるものには限りがありません。無限です。しかし、無限の私欲の根底には、自分自身の幸せを求めるのと同時に、周りの人々の幸せに繋がる「自利利他の精神」が宿っていなければならないことを心に留めておいてほしいと願っています。また、生涯にわたる大きな目標を実現させ、夢を達成するためには、目の前の「今」できる小さなことに向かって一歩一歩着実に取り組む努力をすることが何よりも大切です。人間は弱いもので、目標を立てて、すぐに出来ることほど先延ばしにする傾向にあります。すぐに出来ることを「これは、また、何時でも出来るから、後からしよう。」と先延ばしに、これを積み重ねることで、結果、大きな禍、痛手、失敗となって自分に返ってくることがよくあることです。「何時も出来ると思う心は大事を見逃す元である」との教訓を大切にして、出来ることは積極的に取り組み、日々、研鑽に努めて今を精一杯生きてください。
結びに、あなた方の夢、希望が叶うことを願っての詩を届けます。
「希望」という仏教詩です。
 漫然と生きているのが
 一番いけない
 人間何か希望を持たねばならぬ
 希望は小さくてもよい
 自分独自のものであれば
 必ずいつか
 それが光ってくる
 そして
 その人を助けるのだ
本学園を創設された校祖、左藤了秀先生が女子教育の大切さを提唱されてから早や百十一年の歳月が流れようとしています。あなた方は中学時代に「朝に礼拝、夕に感謝」の校訓を通じて、報恩感謝の念を学び、やさしく、かしこく、美しい女性になれるよう高い教養と豊かな心を育んできました。高等学校に進んでも、是非、建学の精神を大切にし、さらなるフレームの大きな心を培ってください。
本日、卒業証書を手にすることができたのは、一人ひとりの努力があったことはもちろんのことですが、その陰には多くのお力添えや愛情があったからです。とりわけ、保護者、ご家族の皆様の庇護は何事にも替えがたいものです。
卒業生の皆さん、今日まで手塩にかけ、温かく見守り、育てていただいた保護者、ご家族の皆様に感謝しましょう。真心を込めて「ありがとう」という言葉を何度も何度もかけてください。いくら感謝しても、感謝し過ぎることはありません。是非、お父さん、お母さん、保護者、ご家族の皆様にご恩返しをしてください。あなた方にできる一番のご恩返しは健康で、人に迷惑をかけずに、健康で、楽しい学校生活を送ることです。これが最高の恩返しです。
最後になりましたが、いよいよ、これから、あなた方が演じる高等学校という未知のステージの幕が上がろうとしています。中学時代に見つけた一人ひとりの夢のつぼみが大輪の花を咲かせるよう、新たな夢舞台で、精一杯のパフォーマンスをしてくれることを心より期待しています。
卒業生の皆さん、いつでも夢を、一歩先の精神で楽しい高校生活を送ってください。
卒業生の皆さんの幸せを、心より祈って、式辞とします。

令和3(2021)年3月25日