学校長からのメッセージMessage

第73回 大谷高等学校卒業証書授与式

皆さん お早うございます。式辞の前に、一言、申し上げます。
今年度は新型コロナウィルスが発生し、世の中の様々な分野が大きなダメージを受けています。教育界も同様に、教育活動が制限される深刻な教育環境になりました。今なお、感染拡大の収束には至らず、不透明感が残っている現状です。しかし、感染防止対策等を講じ、諸事情を検討した結果、本日、めでたく、卒業証書授与式を挙行することになりました。
ただ、本来なら、本日の卒業式を、ご来賓の皆様方、保護者、ご家族の皆様方とともに、あなた方の卒業をお祝いすることになっていましたが、残念ながら、卒業生の皆様と教職員の参加に止めての挙行になっています。保護者、ご家族の皆様方には、別会場で卒業式の様子を映像でご覧いただいています。どうか、昨今の現状を理解して、受け止めてください。

それでは、式辞を披露いたします。

華やかな 乙女の門出 初々しく

校庭の木々の蕾もほころび始め、ここ阿倍野台にも春の息吹が感じらる光り輝く時期を迎えています。
本日、この佳き日に、令和2年度 学校法人大谷学園、大谷高等学校 第73回 卒業証書授与式を挙行できますことを、大変うれしく思います。改めて、心よりお祝い申し上げます
「高等学校卒業」という人生の節目を迎え、未来に向かって大きく羽ばたこうとしている211名の皆さん、卒業おめでとう。希望と不安が惜別の思いに交錯し、複雑な気持ちの中で、新しい出会いを求めて、胸を弾ませている心境ではないかと思います。皆さんは3年間、勉学は勿論、学校行事や部活動、その他さまざまな活動において素晴らしい成果を残し、大谷高校の歴史に新たな一ページを書き加えてくれました。何事にも一生懸命な誠意溢れる姿勢で取り組まれた皆さんの努力に対し、称賛の拍手を送りたいと思います。そして、私たち教職員に多くの感動と、この学校で奉職する喜びを与えてくれたことに対し、心から感謝します。本当にありがとう。
卒業生の保護者の皆様、お嬢様が高校生活を送られた本校での三年間、語り尽くせぬ多くの喜びと、多くの御心配、御苦労があったことと思います。注がれた惜しみない深い愛情が、ここに実を結び、お嬢様が高校教育を終えられたことに対し、敬意と感謝の気持ちを込め、お祝いの言葉を申し上げたいと存じます。

「お嬢様の御卒業、誠におめでとうございます。」

只今、211名の卒業生の皆様に、本校における高等学校教育課程を修了したことの証として、栄えある卒業証書を授与させて頂きました。それぞれの卒業証書には我が学び舎で育んだ人を愛する、人を思いやる心「豊かな魂」が宿っています。保護者、ご家族の深い愛情、私たち教職員のあなた方に対する末永く、幸多かれと、心より祈る思いが籠っています。あなた方の歩んできた、大谷中学校、大谷高等学校の存在そのものです、きっと、一生涯あなた方の側にあり続け、心の支え、拠り所になってくれるでしょう。
季節はめぐり、常に私たちに相変わらぬ春夏秋冬の色合いを届けてくれます。しかし、時には思いもよらない出来事が起こることがあります。その一つは左藤恵学園長先生がご逝去されたことです。行年96才でご浄土に旅立たれました。学園長先生は阿弥陀仏の住まわれる極楽浄土でやすらかに暮らされていて、西方浄土から私たちの幸せを祈って温かく見守ってくださっています。
学園長先生は僧侶で、政治家、弁護士でもあり、何よりも教育者であられました。政治家とし郵政大臣、法務大臣、国務大臣を歴任され、国会議員として多忙な時であっても、常に世の中の一隅を照らす女性の育成に全身全霊を捧げられました。
本校の教育理念は「次世代の命を育む女性にこそ高い教養と豊かな魂を」の言葉に込められています。この理念を礎にした女子教育の精神的支柱が左藤恵学園長先生でした。ご逝去されたことは誠に悲しく、寂しく、残念でたまりません。学園長先生はひと時も忘れず大谷学園の発展を願われ、学園にご縁のある全ての方々の幸せを願っておられました。先生が望んでおられたことは、『常に感謝する心を持ち続け、課せられた責務を十分に果たし、人として、「生まれてきてよかった」「生きてきてよかった」と思える人生を歩んでほしい』ということであったと思います。先生のご意向に沿うよう、一人ひとりが精進努力し、幸せの道を歩いていただきたいと思います。
もう一つの特筆すべき出来事は新型コロナウィルス禍の影響です。これまで大きな災害をもたらした未曽有の危機はきまって不意に訪れます。非常時になると、自分中心の考え方が芽生え、利己的になり、おのずと人間としての品位が失われていく場合があるのです。しかし、元来、私たちには「和」を尊ぶ心が備わっています。だから、これまでに幾度も遭遇した災難にあっては、「私」より、「公」を優先し、周りの人々を思いやり、互いに支え合うことにより、多くの危機を克服することができたと思うのです。
今後も、有事の時こそ、節度を失わず、競い合うよりも、皆が一つ、ワンチームになり、平穏な生活が営むことができる源泉である「和合なかよくたすけあって」の豊かな魂を大切にしていただきたいと願うばかりです。
桜が咲き誇る時季に夢と希望に胸を膨らませ、本校の門をくぐってから早や六年が経過し、今まさに、あなた方は大谷学園での学校生活に終止符を打ち、新たなステージに上がろうとしています。多武峰の林間学舎に始まり、卒業までの間に様々な行事に取り組み、何にも替えがたい貴重な経験を積むことができました。沖縄への修学旅行では、戦争の悲惨さ、人々の苦しみを肌で感じ、平和の大切さを再認識するとともに、命の大切さを自覚できたことでしょう。また、北海道の修学旅行では、北の大地の雄大な自然を目の当たりにし、自然に対して畏敬の念を抱き、「人とは何か」と言う永遠のテーマに、何かを感じ取れる機会になったと思います。
凛花コース一期生の皆さんには、カナダへの海外修学旅行を実施いたしました。海外という未知の世界に一歩足を踏み入れ、ホームステイなどの様々な体験を通して、「グローバルスタンダード」とは何かを学び、世界の多様性を認識できたと思います。
さらに、人々を誘う華やかな文化祭、体育大会では、日々の集団生活で培った女子力を結集し、見事、大輪の花を咲かせ、見学に訪れた多くの人々に感動を与え、高い評価を頂きました。特に、体育大会では、ここに大谷ありの心に響く演技を披露し、篤い大谷愛、愛校心を届けてくれました。また、大谷の伝統を纏った「民よう」での浴衣姿に、鈴の音、鳴子の響きに惜別の寂しさを感じたことでしょう。おそらく、全ての経験は卒業と同時に、それぞれの脳裏に深く焼き付き、生涯忘れることのない宝物、財産に変わり、これからの人生の糧となると確信しています。
今日から皆様は、一人ひとりが自分自身で選択した道へ、新しい一歩を踏み出します。式辞にあたり、卒業生の皆様が幸せになることを心から念じて、四つのはなむけの言葉を贈りたいと思います。

一つ目は「常に学ぶ努力を怠らず」の言葉です。
インド独立の父ガンジー首相の言葉に「明日死ぬかのように生きろ。永遠に生きるかのように学べ。」のフレーズがあります。これらの言葉の趣旨は、与えられた環境の中で、精一杯努力することに価値に置いて、悔いのない日々を送ることが大切であるということです。加えて、人から与えられるもの、教えられるものには限りがあり、有限である。自ら求めること、自ら学ぶことには限りがなく、無限であると言及しています。あなた方には未知の力、未見の我があります。自分自身の力を信じて、たゆまぬ努力を怠らず、常に様々な分野で学び続け、自己研鑽を積み重ねてください。

二つ目は「あなたに会えてよかったと思われる人であれ」という言葉です。
あなた方は、大谷学園での学校生活で二度と戻ることのない貴重な青春を謳歌し、人と繋がる喜びを知る人になってくれたと思います。学校行事や部活動、日々の生活を通して、よき友達を得て、仲間とともに力を合わせて何かをなし遂げる喜びを感じ取ることができたでしょう。また、周りの人への思いやりや敬意を表し、時に対立や諍(いさか)いもくぐり抜け、他者に対して自分を開くことや、失敗や過ちを互いに許すことも学んだと思います。
人間社会は様々な個性を持った人々で成り立っています。このような多様な人々が共存する環境の中で、私たちは、相手を認め、敬意を抱き、互いに信頼し、協働することによって、人として「生まれてきてよかった」と感ずる喜びを共有することができるのです。
これから歩むことになる未知の世界で、「あなたに会えてよかった」と喜びを感じる人に出会い、また、あなた方も「あなたに出会ってよかった」と感謝される人であってほしいと心より願っています。

三つ目は「回り道も幸せに繋がる素敵な歩み方である」という言葉です
これから、あなた方が歩む道のりは常に陽のあたるバラ色の坂道ではありません。谷あり、山ありの人生を歩むことになるでしょう。人生で悩んだ時に、ふと、思い出して心を癒していただきたい言葉を送りたいと思います。それは「回り道」という三文字です。人生はいつも自分の思い通りに歩むことができるとは限りません。自分の思い通りなる時もあれば、思い通りにならない時もある。楽しい時、悲しい時の連続です。全てのことが順調に進んできたことが、少し陰りが見え始め、これまでに経験したことのない曲がり角を迎える時があります。自信とは不思議なもので、失いかけると一気に音を立てて崩れていく、加えて不安がつのれば、自己否定の悪循環に陥ることもしばしばあることです。そんな時こそ、一旦立ち止まって、自分を見つめ直し、一度肩の荷を下ろすことも大切なことです。自分を点検する最初の機会が来たと、ポジティブに捉えることも必要です。目標を達成して、幸せをつかむ道筋には、近道もあれば回り道もあります。それが「人の道」人生なのです。ともすれば、近道を選びたくなるのが人情です。しかし、後から、しみじみと幸せを感じることこそ、回り道の奥深さではないでしょうか。
人生は長い、焦らず、時には回り道の景色を味わって、ゆっくりと楽しむことも、得難い体験になるに違いないと思います

四つ目は「常に、夢見る乙女心を忘れずに」の言葉です。
私が発信してきた「歩先へ、いつでも夢を」の精神は青春時代に抱いたような初々しい志を持ち続けて欲しいというメッセージです。
人生、百年と言われる長い人生を歩むうえで、時代や社会がどのように変わろうが、常に青春を謳歌する乙女の心を持ち続けてください。青春とは人生の一時期のことでなく、心のあり様のことです。若くあり続けるためには自主性、創造力、情熱、勇気が必要です。人は年齢を重ねた時に老いるのではなく、夢や理想を失くした時に老いるのです。若者であろうと、どれだけ年を重ねた老人であろうと、幼児のような好奇心、子どものような探求心、青年のようなチャレンジ精神があれば、常に乙女のごとく、一歩先へと前向きな姿勢で、夢を追い続けて、素敵な人生を送ることができると確信しています。人は信念とともに若くあり、失望とともに老いるのです。希望がある限り、喜びや美しさを受け止める感性がある限り、何かを求めて心をわくわくさせる胸の高まりがある限り、永遠に若さを保つことができると思います。どうか、いつまでも大谷中学校、高等学校で学んだことを忘れず、常に「夢見る乙女心」を抱き続け、心豊かな人生を歩んでください。
結びに、あなた方の希望が叶うことを願っての詩を届けます。
「念ずれば花ひらく」という仏教詩です。
念ずれば花ひらく
苦しいとき
母はいつも口にしていた
このことばを
私もいつのころからか
となえるようになった
そうしてそのたび
わたしの花がふしぎと
ひとつひとつ
ひらいていった
本学園を創設された校祖、左藤了秀先生が、女子教育の大切さを提唱されてから早111年の歳月が流れようとしています。あなた方は「朝に礼拝、夕に感謝」の校訓を通じて報恩感謝の念を学び、やさしく、かしこく、美しい女性になれるよう高い教養と豊かな心を育んできました。この「大谷精神」こそが、時代がどの様に変わろうが、ゆるぎのない確固たる普遍の真理で、人生の道で迷った時に、いつでも戻れる原点、人生の道しるべであると言えます。青春の真っ只中を本校で過ごした歳月、朝夕に合わせた掌の温もりを忘れないでください。触れ合う人を慈しむやさしさで、磨かれた知性で、美しい振る舞いで、社会の一隅を照らす女性であってください。
あなた方の過ごした学び舎には人を愛する、人を思いやる心が宿っています。いつまでもあなた方の足跡が残り続けるでしょう。たまには人生の羽休めとして、健康で、明るい笑顔で、母校愛を届けに来てください。これからも、常に「我が母校大谷学園」「我が心のふるさと大谷学園」と、声高らかに誇れるように、充実した楽しい生活を送ってくれることを切に願うとともに、卒業生の皆様に幸多かれと心よりお祈り申し上げます。

(令和3(2021)年3月1日)